分科会 Subcommittee

知財教育分科会

知財教育分科会2013年度活動報告および2014年度活動計画

 わが国では、文部科学省によって告示された中学校と高等学校の新しい学習指導要領で知的財産の記述がなされ、知財教育の新しい1歩を踏み出しつつあります。

 知財教育分科会は技術者教育、産業教育、起業家教育あるいは教員養成などの今日の教育に求められる新しい側面を多く取り入れ、初等中等教育段階を含めた、専門家養成に捕らわれない知財教育の普及推進を目的に、教育学の研究者のほか、学校現場の教職員や生涯学習・社会教育などに携わる人々の連携を深め、わが国の知財教育の発展を目指しています。分科会は、学会設立から5年を経て、2007年2月に政策研究院でのキックオフミーティングで産声を上げました。それまでの知財学会には知財教育という研究領域は存在しませんでした。年次学術発表会でも、知財教育に関する研究報告のセッションは存在せず、人材育成セッションの片隅で細々と息づいていました。知財人材育成と知財教育は、知財を人々に知らしめるという共通面はあります。しかし、その対象は知財の専門家や高度な知財オペレーションを担当する者を対象とするのか、それとも広く、あらゆる人々に知財意識を醸成する教育する者を対象にするのか、大きな差異があります。人材育成セッションのなかに紛れ込んだ知財教育に関する研究・実践報告は、聴取者多数の興味と関心を得て、それが分科会の設置の原動力になりました。以降、年次を追って新幹事に加わり、毎年1-2月には年間報告と計画立案する会をもち、その際、幹事から推薦のあった分科会員を新たに幹事の就任を依頼し、現在総勢18名の理事・幹事・事務局員によって、分科会運営がなされています。理事・幹事は、北海道・東北地区から九州・沖縄地区までくまなく分布していることが特徴です。また、分科会の登録会員は、知財人材育成や知財教育に造詣の深い研究者や教育実践者を中心に100名を超えています。

 昨年6月には、日本知財学会創立10周年記念事業「知財教育の実践と理論―小・中・高・大での知財教育の展開」を出版することができました。わが国初の総合的な知財教育専門書です。山形大学の小田公彦氏からは「グローバル化の進展とともに、知財の重要性が高まり、それを扱える人材の養成、また一般の方への基礎知識・関心の涵養が大きな課題となっています。本書は、さまざまな学校での取り組みを紹介しつつ、体系化へ向けての理論的検討を行い、各学校段階における教育のポイントや留意点などをまとめています」と推奨の言葉をいただきました。本書では、これまでの知財教育研究会での研究・実践報告などからすぐれた知財教育実践を集録し、それらを踏まえて、知財教育の理論的な構成を試みています。

 こうして、近年、知財教育研究は着実に進展する一方、学校教育現場の教職員からは、「何をどのように教えるのか」といった戸惑いの声が聞かれます。一方、教職員研修の機会がないまま断片的な知識によって行われる知財教育は、誤った指導が展開されるというケースも散見されます。今後は、効果的な知財教育実践を進めるためには、知財教育の目的や目標、さらには内容や方法など、基礎的なことがらを標準化し、それに基づいた教員研修や教員養成など、知財人材育成のルールを形成することが求められます。学習指導要領に知財が取り入れられた中学校の技術・音楽・美術や高等学校の情報・工業・商業・農業・芸術等の教科だけではなく、社会・公民・理科などの教科にも視野を拡げ、次の学習指導要領に反映されるように働きかけることも重要になってきます。

 こうした状況のもと、第11回年次学術研究発表会知財教育分科会セッションでは、日本の次の知財教育を大きく踏み出すために、セッションにつどうあらゆる人が意見を出し合い、これからの課題を整理・共有する機会を設け、学会からの政策提言について教育分野での意見のとりまとめを行いました。分科会発足から満7年を迎え、次のステップを見据える時期にあります。


1.2013年度活動報告
第26回知財教育研究会 (2013.6.22 / 金城学院大学栄サテライト)
第27回知財教育研究会 (2013.9.14 / 産業技術総合研究所 札幌大通サイト)  
第11回年次学術研究発表会分科会セッション (2013.11.30 / 青山学院大学)
 テーマ:「知財教育担当者の育成と研修
     -知財教育人材育成のルール形成-効果的な知財教育実践のために-」
  形 式: ラウンドテーブル
第28回知財教育研究会 (2014.2.22 /東海大学)


2.2014年度計画
第29回知財教育研究会 (2014.5-6. / 山形大学)
第30回知財教育研究会 (2014.9. / 信州大学)
第12回年次学術研究発表会分科会セッション (2014.11.29-30/東京理科大学 葛飾キャンパス)
  テーマ:「知財教育研究の課題と展望」 
  形 式: ラウンドテーブル
第31回知財教育研究会 (2015.2. / 関東地区)

3.新年度の分科会役員(敬称略、所属は1月27日現在)

(1)理事  井口泰孝(弘前大学)
(2)幹事代表  片桐昌直(大阪教育大学)
(3)副代表  谷口牧子(旭川工業高等専門学校)
 村松浩幸(信州大学)
(4)幹事 ・北海道・東北地区  谷口牧子(旭川工業高等専門学校)(再掲)
 渡部順一(東北工業大学)
・関東甲信越地区  村松浩幸(信州大学)(再掲)
 本江哲行(富山高等専門学校)
 黒田 潔(玉川大学)
 角田政芳(東海大学)
・東海北陸地区  松岡 守(三重大学)
 岡田広司(東京福祉大学)
 世良 清(三重県立津商業高等学校)
・関西地区  片桐昌直(大阪教育大学)(再掲)
・中国・四国地区  木村友久(山口大学)
 内藤善文(愛媛県立東予高等学校)
・九州・沖縄地区  宮里大八(沖縄TLO/琉球大学)
 篭原裕明(全国知財・創造教育研究会)
・海外  陳 愛華(中国・重慶大学)
(5)事務局 事務局長  世良 清(三重県立津商業高等学校)(再掲)
事務局員  渥美勇輝(鈴鹿市立平田野中学校)

4.提案事項(継続事項)
(1)分科会研究紀要の創刊
(2)知財教育書の続刊
(3)教員免許更新講習
(4)WEBページ作成
(5)他団体との連携